大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)4252号 判決

被告人 高昌恩 外一名

〔抄 録〕

本件控訴の趣意は弁護人の控訴趣意書記載のとおりであるからここにこれを引用する。これに対する当裁判所の判断は左のとおりである。

所論は日本サルヴエージ株式会社は本件船骸を管理していた事実はなく、占有していなかつたのであるからこれに対し窃盗罪は成立しないと主張するものである。よつて審究するに、原審並びに当審証人佐藤薫、原審証人白井寅司同君塚博男、同小松原厚の各供述を綜合すれば、本件船骸は、昭和十七年二月二十五日原判示浪花村岩船釣師鼻南方約四百米、水深約六尋の海底に坐礁沈没した汽船ふじしま丸(総屯数四、八六七屯)につき、当時その所有権を取得した日本サルヴエージ株式会社が同年八月下旬頃から十二月末頃迄と、昭和十八年五月末頃から昭和二十年一月下旬頃迄の二回に亙り主機、屑鉄等合計約七百屯を解撤引揚したその残骸であるが、同会社としては、なお約千三百屯の屑鉄の引揚が可能であるので引揚を計画中であつたが配船等の関係で遅延し実施に至らなかつたものであること、昭和二十六年八月頃同会社より地元岩船漁業協同組合に対し、それ迄の分とそれ以後の分とを合し金九万円程を損害金として交付し、爾後解撤作業を再開するも組合側では苦情をいわない旨協定したこと、同会社はふじしま丸沈没当時からその管理方を少くとも口頭を以て地元漁業組合等に依頼してあつたものであり、従つて本件被害にあたつても地元側より同会社に対し連絡されたものであることを認めることができる。以上の事実よりすれば、本件船骸がたとえ所論のように、陸岸からは全然見えず、水面の真上からでも僅かにその暗影を認め得るにすぎない状態のものであるとしても、なお、日本サルヴエージ株式会社がその所有者としてこれを管理し、占有したものであると解すべきは当然である。尤も、昭和二十年春頃同会社が運輸大臣に対し、前記ふじしま丸の解撤作業の終了届をなしたことは記録に徴し認め得られるようであるが、原判決挙示の「汽船ふじしま丸についての上申書」並びに当審証人佐藤薫の供述によれば、同会社は当時金属回収令に基き当局から右沈没船ふじしま丸につき七百十屯の屑鉄の供出を命ぜられ、前記第一回及び第二回の引揚作業によりその内合計四百二十六屯七百一瓩を供出したがその残余につき供出の義務免除を願うため右の如き解撤作業の終了届をなしたものであることが窺えるから、これを以て、その後における同会社の右船骸に対する前示認定の所有関係及び占有関係を否定するに足る資料となし得ないことは勿論である。なお蛇足ではあるが、日本サルヴエージ株式会社が前示船骸につきいまだかつて、その所有権を抛棄したものではないこと右認定の如くである以上、本件犯行の内被告人等が窃盗犯人として取調を受け、これにつき同会社が所轄警察署に対し盗難被害届を提出し取締方を要求した昭和二十七年四月九日以降に属する原判示10乃至22の行為につき、被告人等が窃盗犯としての刑責を免れないことは論ぜずして巳に明らかなところであろう。これを要するに、原審が本件船骸に対する同会社の占有を認め、被告人等を窃盗又は同幇助に問擬したのは正当であり、所論は採用し難く論旨は理由がない。

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